Contents
エンジニアとして技術を磨き続けるだけでは、事業は成功しない
エンジニアとして技術を磨き続けることはもちろん重要ですが、それだけではプロダクトや事業を成功に導くことはできません。特にエンジニアマネージャーに求められるのは、「技術力 × ビジネス視点」のバランスを取りながら、チーム全体が価値を生み出せる環境を作ることです。
優れた技術を持っていても、それが事業成長につながらなければ意味がありません。エンジニアがビジネスの視点を持つことで、より影響力のある開発が可能になり、プロダクトの価値を最大化できます。
今回は、エンジニアマネージャーがチームにビジネス視点を浸透させ、技術と事業を両立させるための考え方と実践方法についてお話しします。
実践的なマネジメントで部下のビジネス視点を育てる
チームで「技術とビジネスの結びつき」を話し合う場を設ける
ビジネス視点を浸透させるためには、チームで「技術とビジネスの結びつき」を考える場を設けることが効果的です。
- ある機能がどう事業に影響を与えるか
- ユーザーにとってどんな価値を提供するのか
といった視点でディスカッションを行います。こうした議論を定期的に行うことで、エンジニアが事業目標を意識しやすくなり、チーム全体で一貫したビジネス視点を持つようになります。
部下がビジネス側と対話する機会を増やす
エンジニアがビジネス視点を身につけるには、実際にビジネスチームとの課題解決を体感することが大切です。
- クライアントミーティングやマーケティング会議にエンジニアを同席させる
- ビジネスチームとのブレストや要件定義をエンジニアも巻き込んで進める
こうした機会を増やすことで、技術的な提案がビジネスにもたらすインパクトを実感できます。マネージャーがビジネスチームとの橋渡し役を担うことが、ビジネス視点定着の鍵です。
1on1でキャリアパスとビジネス視点を結びつける
1on1では、エンジニアのキャリアパスにおけるビジネス視点の重要性について話し合いましょう。
- キャリアアップを目指すうえでビジネス理解がどのように役立つか
- 技術スキルとビジネス視点を組み合わせるとどんな価値が生まれるのか
を一緒に考えます。ビジネス感度を高めることで、リーダーシップやプロダクトへの貢献度も上がり、長期的な成長を後押しするキャリアにつながることを伝えることが大切です。
ビジネス視点を部下に浸透させるためのマネジメントのポイント
ビジネスの目標を部下と共有する
チーム内でビジネスの目標を明確にし、エンジニアリングのタスクとビジネスゴールを紐付けることが重要です。
- 各プロジェクトのKPIや売上目標を示す
- 「なぜこの機能が必要なのか」「どのようにビジネスに影響するのか」を具体的に説明する
こうしてゴールを共有することで、部下が自分の開発が事業に与えるインパクトを理解しやすくなります。
部下の技術的成長によるビジネスの成長を促す
部下の技術的な成長が、ビジネスにどのような価値を生むかを明確に示しましょう。
- コードのリファクタリングやテスト自動化で開発効率が上がる → リリース頻度が増えビジネスチャンス拡大
- インフラの自動化やスケーラビリティ改善でサービスが安定 → トラフィック急増時でも機会損失を抑える
このように具体的な事例を示し、「どう貢献するか」を一緒に考えることで、エンジニアのモチベーションと事業成長をつなげられます。
技術的負債やリファクタリングをビジネス視点で捉えさせる
技術的負債やリファクタリングの判断も、ビジネス視点で行う必要があります。
- 将来の開発スピードを上げるために今リファクタリングをする
- 保守コスト削減により長期的な事業利益に貢献する
といった形で、「なぜこれが事業にとって重要なのか」を具体的に共有しましょう。
2.4 よくある課題と対策
- 組織体制・権限の問題
ビジネスチームとの接点が少ない、情報共有が乏しい
→ エンジニアがビジネス案件に直で関われる仕組みや定期ミーティングの導入 - 評価指標やKPIの設定
エンジニアの評価が技術的な観点だけに偏る
→ “ビジネスインパクト”を含むKPIやOKRを設定する - コミュニケーション・言語の差
ビジネスサイドとエンジニアが異なる専門用語で話し、互いに理解しにくい
→ 共通用語のリストを作る、もしくは翻訳役を立てる - タイムマネジメント・優先度の衝突
技術的負債の返済 vs 新機能開発 vs 事業要望の優先度づけに苦労する
→ 短期・中期・長期それぞれのメリット・デメリットを見える化し、関係者間で合意形成 - 育成・キャリアパスとの連動
ビジネス視点を持つことがキャリアアップにどんな影響をもたらすのか分かりづらい
→ ビジネス×技術で成果を出したロールモデルを紹介し、キャリアパスの事例を示す
僕の経験談
僕がエンジニアのマネージャーとして常に意識しているのは、技術力を活かしてどう事業価値を高めるかということです。あるとき、ビジネス側の要望と、エンジニアとして守りたい技術的品質が真っ向から衝突したことがありました。そこで、エンジニアとビジネスチーム双方に納得してもらうため、
- リスクとビジネスインパクトを共有する場をつくる
- 技術サイドが感じているリスクをビジネス視点で言語化してもらう
- ビジネスサイドが望むスピード感や期待する売上影響などを具体的に示してもらう
といったステップを踏みました。すると両者がお互いの視点を理解し始め、自然と「ユーザーにも事業にも価値を提供する」共通ゴールに近づいていきました。このプロセスで、技術とビジネスの橋渡しこそがマネージャーの大切な役割だと改めて実感したのを覚えています。
まとめ
エンジニアマネージャーには、部下に技術力だけでなくビジネス視点を持たせ、チーム全体が事業価値を意識する組織へと導く役割が求められます。ビジネス視点を持つエンジニアは、単なるタスク処理者ではなく、プロダクトや事業に価値をもたらす“価値創出者”へと成長していけます。
部下が「自分の技術がどうビジネスに役立つか」を常に考えられるようサポートし続けることで、組織全体が成長し、事業にも大きな推進力となるはずです。エンジニアこそがビジネスを意識し、共に歩んでいくことで、組織全体が新たな価値を生み出せます。ぜひ、あなたのチームでもビジネスと技術を両輪で回して、新しい価値を創っていってください。